当縁川河口トーチカ  Touberigawa-Estuary Pillbox

↑ 当縁川(とうべりがわ)の河口に残るトーチカ(2018年8月に撮影)
 築かれた当時(1944年夏~秋)には、銃眼部分以外は巧妙に地中に隠されていたトーチカ。海岸の浸食が進み、2017年5月までに崖から突き出た形で露出した。消波ブロックが途切れているこの場所では、その後も海岸浸食が続いており、2020年9月、ついにトーチカは崖下の砂浜に転落してしまった。
↑ 砂浜に落下し、埋没しかけているトーチカ(2021年7月に撮影)
 トーチカの上部には、二つの換気口がある。銃眼部分は完全に埋没しているようだ。崖の上のほうを見ると、トーチカの出入口とつながっていた地下通路が見える。
↑ トーチカと接続していた地下通路(2021年7月に撮影)
 トーチカが崖下に転落したことで、地下通路の内部を確認できるようになった。地下通路の先は塹壕につながっているわけだが、地下通路の反対側の出入口は塞がっいるように見える。海岸浸食の影響で、いずれこの地下通路も崩壊していくであろう。危険なので、内部に入らぬようにしてください。
↑ 崖の上から見たトーチカの出入口(2021年7月に撮影)
↑ トーチカの出入口(2021年7月に撮影)
↑ 当縁川河口付近の砂浜とトーチカとの位置関係
 まだトーチカが露出していない頃の空中写真に書き込んだ。塹壕とつながる南西側の地下通路から中に入るようになっていた。障壁をまわりこむと銃座があり、銃眼からは砂浜が見える。敵兵からすると、砂浜に上陸後、側面の丘の上から草地に隠されどこにあるか分からない銃眼から機関銃で狙い撃ちにされるのは恐怖であろう。ただし、1945年頃には、米軍は上陸前に猛烈な艦砲射撃を行うようになっていたので、敵兵の上陸時までトーチカが破壊されずに持ちこたえられたかどうかは運しだいであった。
↑ トーチカまで押し寄せる波(2018年8月に撮影)
 「波が穏やかな日でこれくらいなので、海が荒れている日の見学は危険である。消波ブロックを延長しなければ、そのうちこのトーチカも転落・海没(または砂浜に埋没)していくだろう。」と以前記したが、その通りとなった。
↑ 崖の上から見たトーチカ(2018年8月に撮影)
 
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 大樹漁港から東三線を北上し、アイボシマ川を渡ってすぐに右折、そこから海岸沿いの砂利道を北東へ向かって3kmちょっと進むと、民間ロケットの打ち上げ施設に到達する。ここでは、2021年7月31日に、堀江貴文氏が出資するベンチャー企業によって、小型観測ロケットMOMO6号機が打ち上げられ、積載物の宇宙空間への放出に成功した。この打ち上げ施設から東に200mも行かない崖下に、当縁川河口トーチカが転落している。トーチカがもともとあった崖上には、地下通路や塹壕跡が残っている。見学される際には、崖からの転落や波にさらわれる事故にあわぬよう気を付けていただきたい。なお、ロケット打ち上げ時には、打ち上げ施設から半径1.5kmの範囲が立入制限されるので、その場合にはトーチカに近づくことは不可能である。
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