帽子岩トーチカ  Boshiiwa Pillbox

↑ 帽子岩の下部に設置されたトーチカ
 北西・南西・南東の3方向に銃眼が設けられたトーチカである。もし敵が網走港付近から上陸しようとすれば、帽子岩で死角となるため、かなり接近するまでトーチカの存在に気付かず、トーチカの機関銃に狙い撃ちされる。そんな立地条件であるが、陸地側からは丸見えでもある。本格的な戦闘となれば、トーチカ自体が被弾しなくても、背後の帽子岩に砲撃されれば、落石で破壊されてしまったであろう。
※釣り人の転落死亡事故があとを絶たないため、2007年の夏以降、網走市が、帽子岩につながる西防波堤と帽子岩を立入禁止区域に指定しました。帽子岩トーチカの調査に行くには、市の立入許可が必要となりますのでご注意ください。
↑ 安山岩が落下してくる超危険な立地条件のトーチカ
 安山岩の直撃を受けて、トーチカの天井部分が崩壊している。
↑ 南西側から見たトーチカ
 周囲に安山岩が転がっている。真上から硬くて重い岩が落ちてくるのは、砲弾と同じくらい恐怖である。2007年頃までは、岩の直撃で破壊されながらも、天井部分の形状がある程度は残っていた。その後、天井は完全に抜け落ちてしまったようだ。
↑ 南東側から見たトーチカ
↑ 西側から見たトーチカ
 出入口あたりに、けっこうな量の落石が見られる。
↑ 出入口と銃眼
 銃眼のすぐ下あたりに、岩が突き刺さって、大きく破壊されていた。
← 出入口
 中を覗くと、梁として用いられたと思われる丸太が、転がっていた。

※以下、調査のため内部に入って撮影した写真を紹介しますが、かなり危険ですので、絶対に真似しないでください。(現在は出入口も塞がっているので、物理的に不可能ですが…。)
↓ トーチカの内部の様子
↑ トーチカの内部の様子
 内部に入ると、「砲撃で破壊された」と言われたら信じてしまうような壊れ方をしていた。外観だけでは分からなかったが、内部に入ると、帽子岩の安山岩を1メートルくらい掘削してあった。もしかしたら、十勝の立岩トーチカでみられるような、岩をくりぬいてかなり強固なトーチカを築く予定だったのに、岩肌が固すぎて工程に遅れが生じ、やむを得ず外側に出っ張る形状に変更したのかもしれない。
 左端に見えているのが出入口。右端に写っている、壊れた天井のコンクリートの裏に、南東側の銃眼がある。
↑ 壊れた天井の上へ ↑ 割れて穴が開いた、トーチカの一番上の部分
↑ 南西側の銃眼
↑ 北西側の銃眼からの眺め
↑ 内部から見た出入口
 出入口から出て正面の岩に、「名誉作業班 昭和十九年 七月 北部五二四一部隊」の文字が刻まれている。この銘文から、帽子岩トーチカは、第31警備大隊(秘匿名:北部5241部隊、大隊長:神林 譱 中佐)によって築かれ、1944年7月に竣工したことが分かる。
 
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 網走のシンボルである帽子岩に築かれているので、このトーチカを見つけるのは容易である。以前は誰でも、西防波堤の上を約900m歩いて現地に行くことができたが、釣り人の転落死亡事故があとを絶たないことから、2007年から立入禁止となってしまった。帽子岩からの落石の危険性もあるので、遠くから望遠レンズで観察するしかない状況となっている。帽子岩の向こう側には、土木学会選奨土木遺産のケーソンドック(1923年竣工)もあるので、安全策を講じたうえで、観光資源として有効活用していただけたらと思う。
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■更新履歴
  2007年9月14日 公開 ⇒ 2019年1月4日 リニューアル
■外部リンク
  Googleマップの投稿写真(帽子岩)歴旅・温泉、そしてチョッと釣り~北海道の歴史と文化(帽子岩のトーチカ)